Tuya's Marriage

ラナの結婚(パレスチナ映画)、マリア・ブラウンの結婚(ドイツ映画、The Marriage of Maria Braun)に続いて結婚シリーズ、というのも半分ありつつw、中国映画のトゥーヤの結婚(最初の日本公開の時の題はトゥヤーの結婚)を観に行きました。結婚がらみの映画っていやおうなしに女性と男性の位置関係とか、文化の深い部分が見えるので、面白いですわ。

英語の題はTuya's Marriageになってますが、ここはThe Marriage of Tuyaにしてもらいたかったようなw。せっかくベルリン映画祭で金熊賞獲ってるんだし!中国映画としてはチャン・イーモウ監督の「紅いコーリャン」以来だそうです。

http://tuya-marriage.jp/
「活きる」の人が脚本書いてるんですね〜、うわー、あの映画もよかったなあ。。確かに、ストーリーが手堅く、さらっと民謡だとかのエキゾティックな演出を入れてくる感じは似てますね。あと、嫁さんの田舎者らしい所作と、道徳的な頑固さが引き起こすドラマ、という点ではイーモウ監督の「菊豆の物語」を連想させたりもします。

パンフレットによると、ワン・チュアンアン監督のお母さんは撮影現場近くの生まれで、政府の開発と強制移住によって今は失われた内モンゴルの昔からの風景をフィルムに残したかったと言います。役者も地元のモンゴル族を起用し、トウーヤの家も、最後まで残っていたモンゴル族の家を借りて撮影したそうです。ヒロインはユー・ナンという女優さんですが、他の主要な男性2人はエンドクレジットの実名が同じだったので、地元の方なんでしょう。シェング氏はなかなかきれいな顔立ちをしていましたがw。(私がたれ目好きというだけか。。。)

(ここからネタバレ)






この映画のエンディングは救いがなかった。。。。
例えばチャン・イーモウの初期の映画だと、
ヒロインの美しさなり、強さなりが、彼女でなくとも他の人の幸せやポジティブなことにつながっていくものですが、この映画にはそれが何一つない。
トゥーヤの人間としての輝きが、結果的にまだ封建的な周りにそんなに影響を及ぼせるわけではなく、ちょこっと波紋を広げたくらいで、相変わらず男は嫉妬深いの治らないし馬鹿だし。っていう。
にやにやできる女傑奇譚や初々しいロマンスの要素はありつつも、その結論部分が辛いけど圧倒的説得力。でもドラマとしてはトゥーヤと一緒に悲しみ、嬉しさ、サスペンスなんかが体験できるので、うまいなと思います。

この映画、下に英語字幕、右側に日本語字幕が出るのですが、最後の取っ組み合う男の子2人に向けてのトゥーヤの台詞、英語はBastard, All of you!で日本語が「勝手にしなさい!」なんですけど、英語だと、「みんな」という表現で、目の前の男の子だけじゃなくて男全体に言ってるニュアンスが取りやすくなるけど、日本語だけ読むとそこがわかりにくい。(いや、わからなくても状況で簡単にわかるだろうけども。。)
彼女が倫理的な筋も通し、好意を持っていた男と再婚できるというのに、彼女がこれから一緒に暮らして行く男達は相変わらず。男達は彼女の強さに救われない。彼女が死にもの狂いで頑張ったのは結局男達がこれからもぬるーく生きて行ける環境を作っただけのような。。。言い過ぎか。。?シェングはトラックを買ってきたりして、甲斐性のあるところを見せてますしね。

そして、彼女とて一人では生きて行けないわけで、感情的な繋がりが持てる人たちと暮らせるようになったことは幸せなことだと思います。
結果的に、彼女の愛にすがってる割に成長が無い夫が一番駄目な人なんでは。自覚無いけど。というか中途半端にあるけど。(余計質が悪い)でも、駄目な人だからといって切り捨てられるかといったら、そうではない。


彼女が一人小屋に閉じこもってむせび泣くエンディングが悲しいです。そして彼女の名を呼ぶ男の声が光の差し込む小屋の隙間から聞こえてきて、彼女は涙をぬぐって顔を光に向けます。強い彼女はまた外に踏み出すのでしょう。