Lola

ここ数日、アメリカで買ったクリテリオンのファスビンダーDVDボックスをぼけーっと観てます。

(日本のアマゾンでの取り扱いはないですね。。)
http://www.amazon.com/Fassbinders-Trilogy-Marriage-Maria-Veronika/dp/B0000AKY56/ref=pd_bbs_sr_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1236701109&sr=8-1

このクリテリオン・コレクションのボックスは、「西ドイツトリロジー」の三作と、ファスビンダーとその周辺の人(エディターのジュリアン・ロレンツ、映画にも何度か出演したファスビンダーの実母、シュレンドルフなど)のインタビュー、ドキュメンタリーが入ったDVD一枚、あとはブックレットがついてきます。ボックスも装丁も紙でできてるので、出し入れしていてさっそくへこましてしまいました(汗)。売るつもりもないのでいいんですが。英語字幕しかないので、周りの人に貸し出して感動を分かち合えないのが残念です。
なので、ここでつぶやいてみることにしますw。

さて、「ファスビンダーはいつでも強い女に囲まれていた」とはロレンツの言です。
医者である夫と離婚して、一人でファスビンダーを育てた母(息子とそっくり)、ロレンツを始めとする撮影クルー、彼が好んで使った女優たち。
西ドイツトリロジーの主人公の女達は、彼の中の戦後ドイツの女性像なのでしょう。

また、常に撮りたい映像がはっきり頭の中にあり、だらだらと無駄なテイクを撮らないファスビンダーは、スタッフに非常に信頼されていたそうです。


Lolaの話に戻ると、三部作の中の一作なのに、紀伊国屋ファスビンダーボックスに入ってないのはなんででしょうね。。
私は大好きですよ、Lola。


(Lolaのあらすじ)

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ロラは、父を戦争で失い、男手のない家に暮らしていて、生活のために娼館の歌手をしている若い女
彼女には小さな娘が一人いて、母と女三人で暮らしているが、娘の父親は娼館のオーナー兼市の有力な建設会社の社長で、ロラとは愛人関係にある。彼には街の名士(といっても成り上がり系)としての表の生活があり、妻子もいるのでロラとの娘は認知しない。だけど養育費は払っている。

ロラの楽屋にいりびたり、ロラに詩を読んで聞かせたり(ようするに惚れてる)読書している男、エスリンも、昼は市役所勤務。夜は娼館でドラムを叩き、一方でバクーニンの読書会に参加する変わった男。

そんな、着実に復興を遂げつつあるが、退廃的な雰囲気の1950年代ドイツの小さな市に、現れたのがフォン・ブーム氏。
新しい市の建設課の責任者として颯爽と登場、頭は切れるが昔気質なやり手だ、と評判になります。

ロラは、実直で品行方正で、絵に描いたような紳士である彼の評判を聞いて興味を惹かれ、素性を隠して彼の心を手に入れようとします。

若く美しく、ミステリアスなロラにフォン・ブーム氏はあっさり落ちてしまうのですがw、
しかしそこは小さな街、ロラのたくらみも長くは続かず。。。


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シンガーであるロラが娼館(ていうかこの言葉、立派な日本語なのに一発変換できない!!)で流行歌を歌いながら、やるせなさと悔しさを爆発させる場面が、この映画のハイライトです。
ベッラベラベラ、ベッラマリー♪!!キー!!ってなっていてめちゃくちゃw。

スコヴァさんが、
「ロラは、ビジネスウーマンなの。この作品は私の本格的映画デビュー一作目だったから、なんとしてもうまくやりたかった。それで、ロラを、みんなが好きになれるようなキャラクターで演じようかとも思ったけれども、私の中の『いい女優』が、それではいけない、と言ってこのビジネス的側面を出すことにした」(記憶から引用)
と言ってましたが、最後あたりに出てくる、愛人の妻と張り合って「特権グループの一員」として自分を認めさせる場面なんか、それがよく出ています。

もとは、かのディートリッヒの出世作「ブルー・エンジェル」のリメイクの企画から始まり、舞台を1950年代に置き換えることでファスビンダーの作品として昇華されたLolaですが、三部作の中では唯一のハッピーエンドで、コミカルな演出だし、ピンクやら青やら、キラキラのキャンディカラーの照明が楽しい映画です。

メインを張る、バーバラ・スコヴァとアーミン・ミューラー=シュタールは、二人とも清潔感のある美男美女でしかも芸達者。
スコヴァさんは全編歌いまくりだし、ミューラー=シュタールもバイオリンの演奏を披露します。

ミューラー=シュタールは、最近「イースタン・プロミセズ」でロシアンマフィアのこわーいおじいさんを演じていましたが、いくつになっても上品でチャーミングですな。


例えば、トリロジーの第一作、「マリア・ブラウンの結婚」での決め台詞に次ぐ決め台詞、ハナ・シグラの凄みのある美しさ、濃青や紫中心の彼女の衣装と照明が伝える退廃的でムーディな雰囲気もただごとではないのですが、Lolaは、コミカルなメロドラマとして楽しめるのに、きれいなパステルカラーのキャンディを口に入れてみたら、舌がピリっとした!みたいな毒がある。


次はベルリン・アレキサンダープラッツとかアリとかみたいな。
http://www.amazon.com/Berlin-Alexanderplatz-Collection-Günter-Lamprecht/dp/B000VARC2S/ref=pd_bbs_2?ie=UTF8&s=dvd&qid=1236701109&sr=8-2

http://www.amazon.com/Ali-Fear-Eats-Criterion-Collection/dp/B000093NQY/ref=pd_bbs_7?ie=UTF8&s=dvd&qid=1236701109&sr=8-7